鰻の刺身、鰻の握り

「蒲焼界の絶対王者が刺身界への殴り込み」だ。

鰻の血液には毒素があり生食はしない。「イクチオヘモトキシン」という毒で、加熱をすれば毒は消えるので蒲焼を食べるには全く問題がない。しかしながら、あえて手間暇をかけて血ぬきをして下処理をし、華麗な包丁さばきで刺身を提供してくれるお店もある。とてもレアなお店だ。

そんな鰻の刺身に、旅の中でたまたまに出会った時は体の芯から興奮。唐津の居酒屋「はま蔵」。

唐津に入ったのは土曜日の夜、居心地のよさそうな居酒屋を探す。すると驚くことに鰻の刺身を取り扱うお店を発見。土曜の夜ゆえに満員で入れない店が多い街中、思い切って扉を開けるとやはり満員。が、カウンターの端に小さな空が。「よーし、感激、ラッキー。」
「こんな隅の席でもいい?」と女将さんに気遣いをしてもらいながら席に通され、鰻の刺身、鰻の握りを注文。満員のため時間がかかりそう、でも大将が「少し待っててね」と愛想よく声をかけてくれる。この一言で十分。気長に待ちますよ。

とはいっても、それほど時間かからずに鰻のお刺身登場。これはお酒と合わせる以外の選択肢は無い、唐津のお酒「万齢」で合わせる。
もっちり、しっとり、ねっとりの食感、口の中にじわじわと広がる旨み。食べ慣れている蒲焼のような脂は少なく、むしろ筋肉質でしっかりした食感。ポン酢の酸味とあいからまって、お酒にぴったりの味。まさに酒の肴。
そして間もなく鰻の握り登場。こちらはショウガをネギの薬味と合わせることでサッパリとしてシャリと合う。鰻はやっぱり米と合う。

大将が手間暇かけて作っているかと思うと、感激がこみ上げる。6時間の仕込みが必要らしい。職人気質のお仕事に敬意と感謝。

このお店は鰻屋はなく割烹居酒屋なのでその他のメニューもある。「揚げだし明太あんかけ」なるものを注文。明太子をまぶした揚げ出汁豆腐の登場。
この出汁がまたうまい。お燗とともにキューっと。
他にもおいしそうなものがたくさん。

店員さんも笑顔にあふれていてあたたかい。いいお店に出会えた。旅の醍醐味だ。

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