白髪の女将が威勢よく「いらっしゃい、こちらへどうぞ。ゆっくりしてってね。」と初訪問にもかかわらず丁寧に声をかけてくれる。200年続く老舗の女将はさすがだ。心が温まる。
市ヶ谷駅から九段下への通り沿いにある小さな建物の1階。老舗感はまったく無い店構え。ガラガラっと扉を開けると、女将が声をかけてくれる。ステンドガラス風の窓、デッサン風の洋画が飾られていて、6テーブルほどの狭い鰻屋はモダンな雰囲気だ。
鰻重は3種類、1切れ、2切れ、3切れと書かれているのでわかりやすい。2切れの松(3500円)を注文。
女将と女性店員が、大きな声で開けっぴろげに会話をしている。「もう木曜日。働いている時は休みが早く来て欲しいと思うけれど、休みになると働いている方が楽なのよねぇ」
とても庶民的なお店のようだ。これはこれで落ち着く。居酒屋に来たみたいだ。
10分足らずで鰻登場。さてお味は。
とってもアッサリ。脂が落とされていてスッキリしている上にタレもさっぱり。鰻の甘さがほんのり口の中に残る。老舗の味。がっつりさを求めていると少し物足りないかもしれないが、江戸前らしい鰻だ。ごちそうさま。
「若旦那、お茶のおかわりは?」
言葉遣いも粋だ。その呼ばれ方、悪くない。