玄関の半曇りの引き戸は、居酒屋だったら一見さん1人で入るのは躊躇するような門構え。店内は小上がりとテーブル3席でこじんまりとしているのだが、窮屈さはなく砂壁が妙な落ち着きを醸し出す。つけっぱなしになっているテレビの音も、店のつくりとあいからまって庶民的風情に変わる。昔からの日常がある鰻屋だ。
武蔵小杉と横浜駅の間にある綱島の萩栄。駅前の昼から営業している新しめの居酒屋街を通り抜けると、ひっそりと鰻屋がある。
メニューはシンプルに大きい鰻か小さい鰻か。大きい鰻を注文(3410円)して、肴は板わさと冷酒にする。鰻料理の肴は置いていないようだ。
板わさは、醤油をしみ込ませた山葵があらかじめ蒲鉾の上に乗っている。これは味わいが均一にできるので意外と食べやすくていい。
背後から流れてくるテレビの音を聞きながら、冷酒を呑みつつ、20分ほどでうな重の登場。
綺麗な焼き具合の鰻。蒸し加減は強めで少し醤油風味のつよいタレ。お店の雰囲気と同じく素朴で落ち着きのあるうな重。
どこか懐かしさを感じさせる鰻屋だ。