「うちはこれだけで勝負していますから」という言葉が後ろから聞こえてくる。メニューの説明をしているようだ。鰻のメニューは「うなぎ定食」だけ。地焼き1本とご飯。あとは少しの酒と肴。硬派で潔い。
創業して50年以上。古民家ともいえる木造で広々とした店内は、懐かしさと郷愁を感じる。小上がりが4つとテーブル1つ、4席のカウンターは、分厚い1枚板で貫録も十分。
うなぎ定食(4800円)を注文して、定食を待つ間は「ゆがき」という肝の塩ゆでとお燗をいただく。お酒は富貴という一般酒。肝の塩ゆでは、わさび醤油につけていただくのだが、見たままの大雑把な味で、お燗と合わせると見事に大衆居酒屋風になる。鰻はもともと大衆的なものなのだ。
と、ノスタルジックさを味わっていると、15分ほどで定食の登場。
ごはんは木製の丸いお櫃に入っていて、鰻はお皿からはみ出している豪快さ。蒸さずに地焼で尾頭付き。鰻の場合はカブト付きと言った方がしっくりとくる。
タレは甘いがサラっとしていて、岡谷鰻のようなねっとりさは無い。鰻を頬張って、白飯をかきこむ。甘いたれが白飯と合ってうまい。
照り焼き魚定食だ。