手間を惜しまずに仕上げられた鰻だ。鰻重だけでなく、串焼きも、香の物も、お吸い物も、お通しも。中でも炙った肝を使ったお吸い物が印象深い。
来店時間に合わせて鰻を準備をしてくれるらしく、来店前に予約。鰻重をじっくりゆっくりと待っても構わないのだが、お店にはお店の都合とこだわりがある。「郷に入れば郷に従え」がモットー、快く従う。
東高円寺の青梅街道沿いのマンションの1階、歴史のある鰻屋らしいのだが、飲食店には見えない店構えに驚く。
店内はテーブル席が3つほどで、想像以上に手狭だ。予約時にお重(4300円)と串焼(600円~)と伝えていたので、着席早々に大将から焼く前の串を見せていただく。一通りとお酒を注文。
すぐに焼いてくれて鰻串登場。
「ひれ」、「中落ち」、「腎臓」、「背びれ」と秋田のお酒「春霞」。このお酒はひとくち目は爽やか甘めのすっきりだが、癖のある鰻串の味に合わせて、味色を次々と変化させる七変化酒だ。これはたまらない。串焼は見た目も綺麗で盛り付けも上品、塩焼きした背びれは脂ものった逸品だ。お通しにはカブトの佃煮。これまたお酒が進む珍味。香の物も先に出してくれて鰻重待ちの呑みは万全。
そうこうしている間にいささか早いが、鰻重の登場。まだ酒と肴が。。。
お重に敷き詰められた鰻が毛布のようにご飯をくるむ。この一体感は見事。さらには、お吸い物に入っている肝が炙ってあり、ヒレ酒のような香ばしさが香る。
贅沢をしている感のある満足の鰻重。
予約時に「串とお酒でまったりしてから鰻重」と伝えておけば、もっと鰻前酒をゆっくりと落ち着いて楽しめたかな、と思ったり。そこが悔いに残る。