カウンターの前に立つ職人。言葉少なで、長いカウンターを背にして仰いだ炭の粉が舞う。そんな言葉が合うお店だ。
国技相撲の聖地両国。そんな地に「両國」という名で店を構える。創業は明治10年というから140年を超える歴史を持つ老舗だ。
平日の13時に入店すると、ランチのお客さんははけどき。外は風が冷たかったので「お燗をつけてもらえますか」からスタート。いい季節の言葉だ。
そして鰻重箱(上)を注文。鰻前の肴をと聞いてみると、お昼は一品メニューはやっていないとのこと。とても残念。
お燗だけで鰻重を待つ。徳利には屋号が。米の旨味が血液に乗って体中にいきわたるようだ。体が温まる。
20分ほどで真打登場。
蒸し具合、焼き具合のバランスの具合がよくて箸がスルッと入る。コクのある濃いタレと共に職人の鰻味だ。うまい。ご飯は水気が多くて柔らかい。ホクホク熱さ。お吸い物には大きな椎茸が入っていて出汁の味もしっかりとしている。
やはり老舗には老舗のわけがある。
でも、私は鰻前が無しでは少々寂しい。