じっくりと蒸された柔らかい鰻を硬めのご飯の上に、焼きはアッサリで醤油風味の効いた辛めのタレ、登場までにじっくり50分、そして女将の笑顔。江戸前鰻を象徴するお店だ。
関西風とは対極にある蒸しによる上品な柔らか鰻。鰻が江戸前産でないのは時の流れだが、勝手ながらこの味が江戸前鰻なのだと思う。そんな鰻重を出してくれるお店が杉並上井草にある「うな藤」。
西武線の上井草駅から隆起のある道を20分、大通り沿いに面した家庭的なお店がある。入ると同時に「鰻重のご用意に50分ほどかかりますがよろしいでしょうか?」と女将に丁寧な気遣いを受ける。その待ち時間が醍醐味、もちろん構いませんよ。
注文は、肝焼きと板わさ、そして鰻重の特上(5120円)。
お通しの鴨のロースト、そして板わさがまずは登場。ビールを飲みながら、わさびでツーンとさせて喉を潤す。そして小説に没頭。
ほろ酔いで小説を読んで鰻重を待つ。
気持ちが高揚してきて自然に笑顔になる。
笑顔になっていることに気がついてもっと笑顔になる。
笑顔スパイラル。
そして真打の鰻重が登場。
口へ運べば、まさにこれが江戸前鰻。
至福。