街鰻の極み

人に教えたくない鰻屋というのがある。ここ「うな若」がそうだ。

メディアにも出ていない、ネット上でも話題にならない。でも旨い。混みすぎても困るし、お客さんが少ないと心配になる。

注文後に焼いてくれるので一献やりながら待つ至福の時間も味わえる。そんなお店が東急東横線の学芸大学駅近くにある。学芸大学駅は活気のある商店街で飲食店も多く、都心居住地ならではの賑わいがある。学芸大学駅近辺には3件の鰻屋があり、それぞれが特徴的だが、ここ「うな若」は大好きな鰻屋だ。
 

手頃な価格で提供される「共水うなぎ」

うな若は、ブランド鰻の共水うなぎを扱う。坂東太郎よりも身は細いが、脂ののりに上品さを感じる。脂のノリ方、フワっとした焼き加減、やや辛めの甘辛さでコッテリ気味。バランス最高。さらには、このお店は女将さんがあたたかくて、気遣いもいい。心地が良すぎるお店だ。

 

鰻前(うなまえ)の至福なひととき

このお店には何度となく足を運んでいる。最初のうちはあいかわらずおいしい、安定の味と、行くたびに変わらぬ満足感を得ていたのだが、鰻の高騰が続く中でうな若も値上げを決めた時期があった。その時に訪問した日はたまたまかもしれないが、お店の入りも少なく、高騰の影響かと少し寂しく感じたのを覚えている。

それでも鰻を待つ間の肝焼きとひれ焼き、その前のお通しのなすの揚げ浸しは絶妙な甘さで、これだけで十分な気もしてくるほどうまい。そして登場する鰻重は、しっかりとした濃いめのタレに焼き加減も柔らかさも抜群。ご飯が少々べったりしていた日もあったが、そんな日もあるさと笑って済ませられるくらいの至福の時間だった。

うな若は、うまいのはもちろんのこと、女将さんは感じがよくてお店の雰囲気がいい。鰻重を待つ時間も一杯やるのにちょうどよく、それはいつ行っても変わらない。お盆明け、台風後の猛暑の土曜日に鰻重の特上と板わさ、初めて呑む冷酒(芳泉 淡麗純米生貯蔵酒 やわらか)を注文したこともあった。検索しても詳しい情報は見つからなかったが、スッキリとした夏らしい酒だった。お通しの「なめたけ」は出汁がきいていて酒が進む、鰻重を待つ至福の時間を支えてくれる肴だ。そして30分ほどで真打登場、やわらか鰻に少し濃いめのタレという、品のある一杯にありついた。ただ、一品メニューが以前より減っているのが少し気になった。

前代未聞の外出自粛が明けた直後にも、真っ先に鰻と再会しに行った。私にとって3カ月の noウナギlife は厳しい修行生活にも思えたが、心配なのはこちらの心身だけではなく鰻屋さんの方だ。ただでさえ鰻価格の高騰で商売が難しくなっている近年に、追い討ちをかける外出自粛。だからこそ「自粛した分、これからはうなぎを食べに行きますよー」という気持ちで訪れた。この日の串焼きは肝、ヒレ、カブトのいずれも用意ができるとのことで、1本ずつと冷酒を注文して鰻重を待つ。お通しは切り干し大根、ここのお店はお通しがうまいのだ。串焼きが出てくると、鰻重待ちの高揚感とリラックス感の混ざった至福のときを3カ月ぶりに味わった。待ったなぁ、としみじみ思う。そして真打登場でそのうまさにほっぺが崩れる、言葉いらずの感無量。生活が戻ってきたぞ、と実感した瞬間だった。

「GWは鰻でしょ」という気分で久々に訪れたこともある。この日のお通しはひじき煮、ほのぼのとした味でやっぱりうまい。ひれ巻きとかぶとを頼み、日本酒を冷やで。お酒と肴を一緒に出すかを先に聞いてくれるところに、女将さんの心遣いを感じる。よくわかっていらっしゃる。そしておいしい鰻重を今回もいただいた。少しご飯が柔らかくなったような気もしたが、それも含めてとてもおいしゅうございました、感謝感謝である。

土用の丑も終わり、落ち着いたころかなと訪れた夏の日もある。日差しの強い夏日は鰻がいい。お昼は肴の種類が限られているので板わさをいただく。女性の店員さんがお重に付いているお新香を先に出そうかと声をかけてくれる。それでこそ、名店だと思う。お酒は沢の鶴の生本醸造、透き通った呑みやすい酒だった。昔ながらの酒造の酒がいい。お通しはなめたけ、変わらない味。今回もおいしゅういただいた。

 

場所よし、うなぎよし、女将さんよし、待ち時間よし、職人さんの腕前よし。5拍子もそろっている名店。

こうして振り返ってみると、うな若は何年経っても変わらない安心感をくれる店だ。鰻の質、焼きの技、女将さんの気配り、そのすべてが安定していて、久しぶりに訪れてもすぐに「ああ、この味だ」と思わせてくれる。人には教えたくないが、こうして書いてしまうくらいには、やはり大好きな鰻屋なのである。
こんなお店ははなかなか無い。

最高峰の味!!

鰻の前にお酒を一杯

初回訪問日:2015/04/04

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食べログ情報

うな若

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