煮こごりと菊源氏

煮こごりが好きだ。メニューにあると大抵は注文する。肝焼きのような鰻屋の定番肴ではないが、珍しいわけでもなく、感覚でいうと10店に2店舗くらいは煮こごりがあるのではないだろうか。

煮こごり(煮凝り)とは、魚や肉を出汁で煮た後、冷えた煮汁がゼリーのように固まったもの。煮こごりは使う食材によって、冷めると自然に固まるものと、ゼラチンや寒天を加えて人工的に固めるものがあるのだが、鰻の煮こごりは前者。茶色いゼリーのようなものなので見映えはしないが、口の中で溶けてあふれる甘さと旨さ、鰻のタレに近い味付けや出汁の味が舌の付け根まで包み込み、これ以上ない酒の肴になる。

そんな煮こごりが田端の鰻屋「源氏」にもある。源氏は田端から10分ほど歩いたところにある鰻屋。昭和の初期に創業らしく、伝統のあるお店だ。ここには菊源氏という見慣れないお酒がある。兵庫県は灘の富久娘酒造のお酒なのだが、もともとは伊豆の酒で酒造元が買収されてのことらしい。今は伊豆で生産はしていないので、灘でつくる伊豆の酒。風変りなお酒だ。

なぜこのお酒がこのお店の定番酒になっているかというと、もともとは江戸時代に駿河の国にあった鰻屋「角屋」がこのお店の前身で、今の地で再興する際に、伊豆のお酒の「菊源氏」の「源氏」が屋号としたようだ(お店のホームページより)。メニューにも屋号の由来という記載がされている。

と、前置きが長くなったが、煮こごりと菊源氏のお燗をいただいたという話なわけだ。

煮こごりと燗酒ほどマッチするものはない。菊源氏はお世辞にも銘酒とは言い難い昔ながらの普通のお酒だが、煮凝りの甘旨さとお燗の温もりに口角が上がる。まさに梅と鶯、歴史のある趣。これが鰻屋呑みの神髄。

そして注文から30分ほどで真打登場。

うな重の極上(3850円)。とても優しく焼かれていて明るい色をしている。
スッと箸が入る柔らかさでほんのりと甘め。タレは少なめなのでアッサリとしていて、いいバランスだ。

お店の歴史を浮かべながら食べられる鰻屋はとても落ち着く。

名店!また行く!!

鰻の前にお酒を一杯

初回訪問日:2023/02/04

食べログ情報

源氏

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