小さな一軒家の鰻屋に大将と女将の長年の間柄が凝縮されている。東急東横線で多摩川を渡ってすぐの新丸子。武蔵小杉の高層ビル群と多摩川の間にある、こじんまりとした住宅街に50年の歴史を持つ街鰻。
手狭ながら綺麗に整った3つのテーブル席とカウンター6席。お世辞にもゆったりとは言えず、カウンターに腰を下ろすと調理場との距離が近いので緊張感はあるが、街鰻屋の親しみやすさともいえる。カウンターの中で鰻を焼く大将とお膳を整える女将。
冷え冷えとした年内最後の土曜のお昼、銘柄の書かれていない日本酒を熱燗、そして鰻の煮凝り、鰻重の鶴(3470円 )を注文。
熱燗と煮凝りがすぐに登場。その大きさとボリュームに面食らう。鰻の内臓が詰め込まれた大きな煮凝り。出汁の味は軽めなので少し物足りなさもあるが、熱燗との相性はいい。
日本酒の銘柄はわからないが、聞くのも野暮というもので、大将の鰻を焼く姿を見ながら大きな煮凝りを食べるピッチを上げながらお酒を進めること15分ほどで真打登場。
箸を入れるだけで、鰻の柔らかさがわかる、そしてご飯も軽やかにほぐれる。
口の中でトロトロと崩れる柔らかい鰻。甘辛いたれ。こだわりのお米。まさに関東鰻。
実はこのお店には、10年以上前に何回か来ていたのだが、時間が経つと感じ方が変わるものだ。自分が変わったのだろうか、お店が変わったのだろうか。無常なり。