雌(メス)鰻とはどんなものなのか。本当にうまいのか。養殖鰻の9割は雄鰻なので雌鰻が流通することはまず無い。牛肉の世界では雌牛のみがブランド認定されるものがあるくらいだが、果たして鰻はどうなのか。
そんな好奇心からブランド鰻「でしこ」を食すために永田町の北白川へ。
「でしこ」は2024年に誕生した新しいブランド鰻。浜松の養殖組合が定めた基準をクリアした鰻で、特徴なのは餌に大豆イソフラボンを使うこと。大豆イソフラボンを使うことで大半が身の柔らかい雌の鰻になるという。まさに養殖技術の結晶だ。そもそも鰻は小さな頃には性別が定まっておらず、育つ環境によってオスになるかメスになるかが決まる。養殖場の鰻は原因はわからないものの9割がオスの鰻。
謳い文句は「雌(メス)化技術と浜名湖養鰻と進化が織りなす味」。
これまでの常識を覆す「でしこ」。雌鰻のお味とは。
とは言いながら、はやる気持ちを抑えて、いつも通りうな前を楽しむことからスタート。
店内は8テーブルと個室、天井が高くてゆとりがあり、和装の店員さんも上品で丁寧なので落ち着く。
注文は肝煮と奈良の春鹿純米酒の超辛口180m瓶。超辛口と謳われているとはいえ、米の旨みを感じられる銘酒だ。肝煮は柔らかく丁寧な薄味で調理された逸品。春鹿とは良い調和。
そして真打「でしこ」の地焼きの鰻重(8580円)登場。
名刺サイズの名札付きで登場。クスッと笑えて気がほぐれる。
蓋を開けると、東京では珍しい腹開きの地焼きが重箱に敷き詰められている。
タレが香ばしく焼かれていて、まさに身を焦がさずタレを焦がすという絶景。肉厚さは無いが濃縮された鰻味で身も皮も柔らかく、地焼きによってサクサク感がある。タレはやや甘めなものの、鰻自身のおいしさが周り一体を凌駕するので、それほど気にならない。
この地焼きでの柔らかさが「でしこ」の特徴だろうか。
浜名湖養殖の結晶がここにある。
今後の展開にも期待。