東京で味わう関西風(地焼き)うなぎの流儀|「待つ美学」を捨ててビールと熱気で喰らう名店3選 (地焼き 実践編」)

都内でもすっかり定着してきた「地焼き」の文字。東京の鰻屋に馴染みがある人ほど、一度頭を真っ白にしてからその暖簾をくぐってほしい。頭のどこかで「肝焼きでもつまみながら、日本酒を一献傾けて、うなぎが焼き上がるのをゆったり待とう」と構えてはいないだろうか。

ハッキリ言おう。その姿勢こそが野暮というものだ。

地焼きのうなぎには、江戸前のような品のある高級イメージはひとまず脇に置いておいたほうがいい。関西風の真髄は、暖簾をくぐりながら「ちょっと邪魔するで、うな丼ひとつ!」と威勢よく頼み、炭火の熱気とともに勢いよく胃袋へ流し込む、あのワイルドなスピード感にある。今回は、江戸前とは正反対の美学を持つ関西風うなぎ、その楽しみ方を紹介したい。

楽しむポイントが違う。「待つ美学(静)」vs「スピードと熱気(動)」

関東うなぎの美学:待つ時間を楽しみに変える(うな前)

江戸前の鰻は、割き、串打ち、白焼き、蒸し、本焼きという工程を経る。この一連の作業には40分以上かかることも珍しくない。だからこそ、この待ち時間を苦痛ではなく豊かな時間に変える文化が生まれた。お新香や肝焼きをつまみながら、日本酒を傾ける。いわゆる「うな前」である。鰻が焼き上がるまでの静かな時間そのものを味わうのが、江戸前の粋だ。

関西風の美学:まだかまだかとライブ感を味わう

一方、関西風はまったく逆の発想でできている。強火の炭火で一気に焼き上げるため、提供のスピードが圧倒的に早い。ここで大切なのは「出来立ての熱気」を逃さないことだ。運ばれてきた丼から立ち上る湯気とともに、ハフハフと勢いよくかきこむ。このライブ感こそが、地焼きにおける正義なのである。

表面はクリスピー、身は弾力。関西風うなぎの代表格「名古屋うなぎ」

蒸すことで余分な脂を落とし、極限まで柔らかさを追求する江戸前に対し、地焼きのアプローチは真逆である。地焼きは自身の脂で皮目を揚げ焼きにするようなかたちになるため、表面はパリッとしたクリスピー感、身には跳ね返すような弾力が残る。

別のコラムでも述べた通り、地焼きと一口に言っても地域ごとに多種多様な姿がある。その中でも現在、東京に次々と進出し主勢力となっているのが、関西風の雄とも言える「名古屋(中京)うなぎ」だ。

名古屋うなぎの最大の特徴は、豆味噌文化に根ざした「たまり醤油」仕立ての濃厚で甘辛いタレにある。カリカリに焼き上がった幅3〜4cmの短冊うなぎに、このドロッと力強いたまりダレが絡みつく。食感や満足感の方向性としては、焼肉丼を食べているときの感覚に近いといえばイメージしやすいだろうか。

地焼きのさばき方・切り方・タレの地域差について詳しくは、こちらのコラムも参考にしてほしい。『「地焼き」はひとつじゃない|浜松・岡谷・名古屋・大阪・柳川で読み解くうなぎ文化の東西差 (地焼き 千差万別編)

【利き酒師の結論】日本酒は要らない。「瓶ビール」一択

普段は日本酒を愛してやまない利き酒師の立場からいうのも妙な話だが、この地焼きのうなぎに関しては、合わせるべきは瓶ビールの一択である。骨の唐揚げでもつまみにすればいいし、そもそも提供スピードが早いため、ビールさえあればつまみすら無くても間が持つ。

ちなみに、肝焼きも関東と関西では表情が異なる。串に刺して提供するのは関東風の店に見られる形式で、関西風の店では肝もカリッと香ばしく焼き上げられ、皿に並んで出てくることが多い。この違いひとつにも、両者の美学の差が表れている。

熱々の丼を前にして、ビールをグッと煽る。そして間髪入れずに、ワイルドにかきこむ。サクッと飲んで、サクッと喰らう。これこそが、地焼きのうなぎにおける最高の粋だと私は思っている。

瓶ビール

東京でその「熱気とスピード」を喰らうおすすめ名店

都内で、本物の地焼き・名古屋うなぎの勢いを体感できる店を三軒紹介したい。

ひつまぶし 美濃金 神田本店

岐阜・美濃の流れを汲む名店。たまり醤油がしっかりと染み込んだ極細短冊が、カリッカリに焼き上がっている。これぞ東京の人がイメージする「地焼きうなぎ」そのものといっていいだろう。

美濃金ひつまぶし
美濃金の探訪記はこちら。)

うな富士 有楽町店

本場名古屋の熱気を、有楽町で味わえる一軒。名古屋で絶大な人気を誇り、暖簾分けや分家を多く輩出する名門の味であり、地焼きならではの圧倒的な香ばしさと、溢れ出る脂のパンチが楽しめる。職人も名古屋から呼び寄せたという力の入れようだ。

うな富士 うな丼
うな富士 有楽町店の探訪記はこちら。)

うなぎ四代目菊川 ムスブ田町店

切らずに丸ごと一本を地焼きにして提供されるビジュアルのインパクトは圧巻の一言。炭火の強い遠赤外線で皮目をパリッと焼き上げたクリスピー感を、舌だけでなく視覚でもダイレクトに楽しむことができる。モダンな空間でありながら、供される鰻は極めて力強い。

3代目菊川うな丼
うなぎ四代目菊川 ムスブ田町店の探訪記はこちら。)

おわりに:名古屋うなぎをガッついてみよう

時間をかけて職人の手仕事を慈しむ、静寂に包まれた江戸前の世界もいい。しかし、地焼きを味わうときは「ちょっと邪魔するで!」の精神で、暖簾をくぐってガッついてみてほしい。熱気とスピード感に身を委ねる体験は、江戸前とはまったく別の鰻の魅力を教えてくれるはずだ。

今回は東京で味わえる名古屋系を中心に紹介したが、都内にはまだまだ個性豊かな地焼きの名店が存在する。多様な地焼きの世界を探訪したい方は、ぜひこちらの東京で食べられる地焼き(関西風)探訪記一覧も参考にしてほしい。

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